長期・積立・分散投資とは?値動きと上手につき合うための基本

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この記事は「投資を学ぶ」シリーズの一つです。NISAの仕組みをまだ確認していない方は、先に新NISAの基本もあわせてご覧ください。

投資を始めると、「今は買い時なのか」「下がったから売るべきか」と毎日の値動きが気になりやすくなります。けれども、将来の値動きを正確に当て続けることは簡単ではありません。そこで役に立つ基本の考え方が、長期・積立・分散です。

これは利益を保証する方法ではありません。値動きや損失の可能性をなくすものでもありません。それでも、一つの国、一つの会社、一つのタイミングに賭けるより、家計に合う形でリスクを抑えやすくする考え方です。金融庁も、家計管理とライフプランニングを土台にしたうえで、この三つを資産形成の基本として紹介しています。

この記事では、三つの考え方をひとつずつ確認し、公的なデータで「どのくらい結果が違ったのか」を見たあと、自分に合うリスクの大きさを決めるための質問と、つまずきやすい勘違いを整理します。反対に、どの商品を買えばよいか、いくら投資すべきかという個別の判断は扱いません。

数字で見る:5年と20年で結果のばらつきはどう違ったか

「長く持つ」と言われても、実感がわきにくいかもしれません。金融庁が公開している「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(2023年7月版)には、実際の指数を使った計算結果が載っています。1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資を行い、5年間と20年間それぞれ保有した場合の年間収益率を計算したものです。株式は国内がTOPIX(配当込み)、海外がMSCIコクサイインデックス(円換算ベース)、債券は国内がNOMURA-BPI総合、海外がFTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)で計算されています。

出所:Bloomberg、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社のデータより金融庁作成。指数への言及は例示であり、特定の商品を勧めるものではありません。

出所:Bloomberg、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング株式会社のデータより金融庁作成。指数への言及は例示であり、特定の商品を勧めるものではありません。

保有期間 100万円が期間後にいくらになったか 元本割れ
5年 74万円〜176万円 あり(始めた時期による)
20年 186万円〜331万円 1989年以降のデータではなし

 

5年という比較的短い期間では、始めたタイミングによって大きな収益になることも、元本割れになることもありました。20年という長い期間では、どの時点から始めても収益は安定し、少なくともこのデータの範囲では元本割れとなったケースはなかった、と説明されています。

ここで大切なのは、この数字の読み方です。これは過去のデータをもとにしたシミュレーションであり、将来の運用成果を予想したり保証したりするものではありません。20年後も同じ範囲に収まるとは限りませんし、途中で売れば、その時点の価格が結果になります。「長く持てば増える」ではなく、「短い期間ほど、始めた時期の影響が大きく出た」と読むほうが実際に近いと思います。

同じガイドブックには、2003年1月から2022年12月まで毎月1万円を積み立てた場合のシミュレーションもあります。総積立額240万円に対して、全世界株式の指数に連動する資産では690万円、日経平均株価に連動する資産では443万円という結果です(税金・手数料は考慮されていません)。同じ期間、同じ金額でも、何に投資したかで結果は変わります。どちらも将来の成果を保証するものではありません。

長期:短い値動きだけで判断しない

株式や投資信託の価格は、日々上下します。一年後に必要なお金を投資していると、下がった時期に売らなければならないかもしれません。だからこそ、投資に使うのは当面使う予定のないお金が基本です。生活防衛資金をまだ確認していない方は、NISAの前に確認したいことを先に読んでみてください。

長い期間を前提にすると、一時的な値動きだけで判断しにくくなります。ただし、長く持てば必ず利益が出るという意味ではありません。自分の目的、必要になる時期、家計の余裕を確認することが先です。

複利が働くのは「取り崩さなかった分」だけ

長期投資の効果としてよく挙げられるのが複利です。複利とは、投資や預金などで得た収益を、当初の元本にプラスして運用することで得られる利益のことです。運用で増えた分がさらに運用に回るため、期間が長いほど差が出やすくなります。

逆に言えば、増えた分を毎回受け取って使ってしまうと、この効果は働きません。毎月分配型のように、こまめに分配金を出す仕組みの商品は、受け取る安心感がある一方で、運用に回る金額が増えにくくなります。どちらが良いかは目的次第ですが、「長期で増やす」ことを目的にするなら、分配金を再投資する設定になっているかを確認しておくとよいでしょう。

積立:決めた金額を続ける仕組み

積立投資は、毎月など決めた間隔で、一定額を購入する方法です。価格が高いときだけ多く買う、下がったときだけ怖くなって何もしない、といった感情的な判断を減らしやすくなります。この「一定金額を・定期的に」購入する方法は、ドル・コスト平均法と呼ばれます。

購入単価が平準化されるとはどういうことか

金融庁のガイドブックにある計算例が分かりやすいので、そのまま紹介します。合計4万円分の投資信託を買う場合で、基準価額(1万口あたり)が1万円 → 2万円 → 5千円 → 1万円と動いたときの比較です。

買い方 購入総額 購入口数 平均購入単価(1万口あたり)
最初に4万円分を購入 4万円 4万口 1万円
毎月1万円ずつ購入 4万円 4.5万口 約9千円

基準価額が高いときは少なく、低いときは多く購入することになるため、この例では平均購入単価が下がりました。値動きを読んだ結果ではなく、同じ金額を続けたことによる結果です。

ただし、金融庁の資料自身が注意書きを付けています。ドル・コスト平均法で投資を行えば確実に利益を得られるというものではなく、価格が下落し続けた場合などは損失を被ることもあります。また、相場が上昇し続けている場合などは、一括で投資したほうが有利なこともあります。積立は「必ず得をする買い方」ではなく、判断の回数を減らして続けやすくする仕組みだと考えておくと、期待とずれにくくなります。

金額は「続けられるか」で決める

積立額は大きいほど良いわけではありません。家計が苦しくなったときに止める必要がある金額ではなく、無理なく続けられる金額にします。収入や支出が変われば、金額を見直して構いません。ボーナス月だけ増やす、しばらく止めて生活を立て直す、といった調整も失敗ではありません。

分散:一つに偏らない

分散には、主に三つの考え方があります。

  • 資産の分散:株式、債券など、特徴が異なる資産を組み合わせる
  • 地域の分散:日本だけ、ある一つの国だけに偏りすぎない
  • 時間の分散:一度に全額を投資せず、購入時期を分ける

値動きが異なる複数の資産に分けて投資することで、価格の変動をある程度抑えることが期待できます。ただし、分散しても、すべての資産が同じ時期に下がることはあります。分散の目的は、損失を完全になくすことではなく、特定の出来事の影響を家計全体で受けすぎないようにすることです。

「知っている会社」に偏りやすいことに気をつける

分散のつもりで選んだつもりが、実は偏っていることもあります。よく知っている会社、勤め先、身近な業種は、安心に見えるぶん多く持ちやすくなります。『賢明なる投資家』の解説でも、身近な会社ほど詳しく調べずに買ってしまいやすいという傾向が指摘されています。勤め先の株を多く持っている場合は、給料と資産の両方が同じ会社の状況に影響される点も確認しておきたいところです。

比率が崩れてきたときの見直し(リバランス)

分散の度合いは、一度決めたら終わりではありません。積立を続けるうちに、値上がりした資産の比率が自然に大きくなることがあります。年に一度など、決めたタイミングで保有割合を確認し、当初の考え方から大きくずれていないかを見直す方法があります。

見直し方には、いくつかのやり方があります。

  • 日付を先に決める:「毎年1月」「毎年の誕生月」など、相場ではなくカレンダーで確認する
  • 増えたほうを売らずに整える:これから積み立てるお金で、比率が小さくなったほうを多めに買う
  • 細かい差は気にしない:数%のずれをその都度直す必要はなく、幅を持たせて考える

頻繁に売買し直すことが目的ではありません。売却には税金や手数料がかかる場合もあるため、無理なく続けられる頻度で十分です。相場が下がったから比率を変える、上がったから増やす、という判断は、リバランスではなく相場予想になってしまいます。

リスクは「値下がり」だけではない

投資のリスクには、価格変動だけでなく、発行体の経営状態、金利、為替、国や地域の状況などがあります。商品を増やせば分散になるとは限りません。同じ国、同じ業種、似た値動きの商品ばかりを持つと、見た目ほど分散できていないことがあります。

もう一つ、見落とされやすい考え方があります。『賢明なる投資家』では、価格が一時的に下がること自体と、下がった時点で売らざるを得ないこととを分けて考えています。売る必要がなければ、途中の値下がりは評価額の変動にとどまります。問題になるのは、生活費が足りない、急な支出が発生したなどの理由で、下がった時期に売らなければならない状態です。

この見方に立つと、リスクを小さくする方法は「値動きの小さい商品を探すこと」だけではありません。当面使うお金を投資に回さないこと、生活防衛資金を先に確保しておくこと自体が、リスクを小さくする行動になります。

海外資産を持つ場合は、円に換算した価値が為替によって変わることもあります。詳しくは外貨建て資産と為替リスクの記事で説明します。

自分に合うリスク量を、金額で確認してみる

「どのくらいのリスクなら大丈夫か」は、言葉で考えると分かりにくいものです。自分の投資額に当てはめて、評価額がいくらになるかを計算してみると、感覚がつかみやすくなります。下の表は、投資額ごとに、評価額が10%・20%・30%下がった場合の金額を単純計算したものです(手数料や税金は考慮していません)。

投資額 10%下落 20%下落 30%下落
50万円 45万円(−5万円) 40万円(−10万円) 35万円(−15万円)
100万円 90万円(−10万円) 80万円(−20万円) 70万円(−30万円)
300万円 270万円(−30万円) 240万円(−60万円) 210万円(−90万円)
500万円 450万円(−50万円) 400万円(−100万円) 350万円(−150万円)

先ほどの金融庁のデータでは、5年保有の場合に100万円が74万円になった時期もありました。同じことが自分の投資額で起きたら、どう感じるかを想像してみてください。金額を見て落ち着かない気持ちになるなら、その金額が今の自分に合っていないというサインかもしれません。

ちなみに、私は -10〜15%になったら、損切りをしています。

あわせて、次の質問も確認してみましょう。

  • 評価額が下がったときも、生活費を取り崩さずに待てるか
  • 仕事や家族の事情で、近いうちに現金が必要になる可能性はあるか
  • 商品がなぜ上がり下がりするのかを説明できるか
  • 値動きが気になりすぎて、生活や睡眠に影響していないか

一つでも不安が大きいなら、投資額を小さくする、現金を増やす、商品の仕組みを学ぶなどの選択があります。投資は、我慢比べではありません。

よくある勘違い

「分散しておけば損はしない」

分散は、特定の会社や国の影響を受けすぎないようにする方法であって、値下がりを防ぐ仕組みではありません。世界的な出来事が起きた時期には、多くの資産が同時に下がることもあります。

「長く持てば必ず増える」

金融庁のデータで20年保有の元本割れがなかったのは、1989年以降の一定の条件での計算結果です。将来も同じになる保証はありません。また、途中で売れば、その時点の価格が結果になります。

「積立なら一括より必ず有利」

相場が上昇し続ける場面では、早く投資したほうが結果が良くなることもあります。積立の利点は、判断の回数を減らし、続けやすくすることにあります。

「商品の数を増やせば分散になる」

同じ地域・同じ業種・似た値動きの商品をいくつも持っても、分散の効果は思ったほど大きくなりません。何本持っているかではなく、中身が何に投資しているかを確認しましょう。

まとめ

長期・積立・分散は、未来を予想するための方法ではなく、予想が外れても続けやすくするための仕組みです。自分の生活に必要なお金を守りながら、できる範囲で続けることを大切にしましょう。

まずは一つだけ、今日できることを選んでみてください。積立額が今の家計に合っているかを見直す、保有している商品が何に投資しているかを確認する、次回のリバランスの日付を決める。どれも数分でできて、値動きに左右されない行動です。

制度や数字の詳細は、金融庁「資産形成の基本」金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」で確認できます。この記事で紹介した保有期間別のデータと購入単価の計算例は、いずれもこのガイドブックに掲載されているものです。

将来の運用成果を予想・保証するものではありません。投資は元本保証ではなく、価格変動や損失のリスクがあります。個別の商品選びや税務については、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

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