この記事は「投資を学ぶ」シリーズの一つです。まだ生活防衛資金を確認していない方は、先にNISAの前に確認したいことを読むことをおすすめします。
新NISAは、投資で得られた売却益や配当・分配金を非課税で受け取れる制度です。使い方の自由度が高くなった一方で、「枠を早く埋めないと損をする」と焦る人も増えました。
けれども、NISAは急いで大きな金額を投資するための制度ではありません。家計、目的、値下がりへの耐性を確認してから、自分に合う金額で使うことが大切です。ただし「焦らなくていい」の意味は、何歳から始めるかによって少し変わります。使える時間の長さが違うからです。
2026年7月時点の新NISAの基本
日本に住む18歳以上の人は、原則として一人一口座のNISA口座を開設できます。つみたて投資枠と成長投資枠は併用できます。
- つみたて投資枠:年間120万円まで
- 成長投資枠:年間240万円まで
- 二つを合わせた年間投資枠:最大360万円
- 非課税保有限度額の総枠:1,800万円
- うち成長投資枠で使える上限:1,200万円
- 非課税で保有できる期間:無期限
売却した商品の取得額分の枠は、翌年以降に再利用できます。ただし、売却しても損失が消えるわけではありません。年間枠と総枠は、時価ではなく取得額をもとに管理される点も覚えておきましょう。
制度の詳細や対象商品は変わる可能性があるため、口座を開く前と買う前には金融庁のNISA特設サイトで最新情報を確認してください。
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
つみたて投資枠
長期・積立・分散投資に向く一定の投資信託が対象です。投資経験が少なく、毎月の積立を仕組みにしたい人にとって、考えることを減らしやすい枠です。
成長投資枠
上場株式や投資信託など、より幅広い商品が対象になります。選択肢が増える分、商品ごとの値動きや仕組みも理解する必要があります。成長投資枠を使うこと自体が、つみたて投資枠より優れているという意味ではありません。
どちらから始めるか迷ったら
投資の経験が少ない、毎月の値動きを細かく追うのが苦手という場合は、つみたて投資枠を中心に、決めた金額を淡々と積み立てる形から始めやすくなります。商品を選ぶ時間を作れる、値動きの理由を自分で調べられるという場合は、成長投資枠を少しずつ併用する選択もあります。どちらか一方を選び切る必要はなく、生活の余裕に応じて配分を変えても構いません。
「何歳から急ぐ必要があるか」を計算してみる
非課税保有限度額1,800万円は、非課税で保有できる期間が無期限であるため、制度上「何歳までに埋めなければならない」という期限はありません。ただ、「老後資金として何歳までに用意しておきたいか」という目標を一つ置くと、必要なペースは具体的な数字で確認できます。
例えば、老後の目安としてよく使われる65歳を一つの例にして、そこまでに1,800万円の枠を満額使い切ることを目標にした場合、開始年齢ごとに必要な積立額は次の通りです(すでにNISAで保有している金額がある人は、1,800万円から保有額を引いた残りの枠で計算し直してください)。
| NISAを始める年齢 | 65歳までの年数 | 満額(1,800万円)に必要な年間積立額 | 月換算 |
| 25歳 | 40年 | 約45万円 | 約3.8万円 |
| 30歳 | 35年 | 約51万円 | 約4.3万円 |
| 35歳 | 30年 | 約60万円 | 約5万円 |
| 40歳 | 25年 | 約72万円 | 約6万円 |
| 45歳 | 20年 | 約90万円 | 約7.5万円 |
| 50歳 | 15年 | 約120万円 | 約10万円 |
| 55歳 | 10年 | 約180万円 | 約15万円 |
| 60歳 | 5年 | 360万円(年間上限と同額) | 30万円 |
この表からわかるのは、60歳より前に始めるなら、65歳までに満額を目指す場合でも、年間上限(360万円)を毎年使い切る必要はないということです。一方、60歳で始めて65歳までに満額を目指すなら、年間上限をすべての年で使い切らないと届きません。年間上限360万円は1,800万円÷5年から来る数字でもあるため、60歳を過ぎてから始めた場合、上限まで積み立てても65歳までに満額へ到達すること自体ができなくなります。
つまり、「急ぐべきかどうか」は年代そのものでは決まりません。決まるのは、非課税枠を使い切りたいと考える年齢までの残り年数と、その年数で無理なく用意できる金額との関係です。65歳という目安を、自分が考える年齢に置き換えて計算し直してみることをおすすめします。
複利を考えると、同じ金額でも増え方が違う
ここまでの表は、「1,800万円の枠を埋めるために必要な金額」の計算でした。実際に運用すると、投資した元本に運用益が積み重なっていく複利の効果があるため、同じ毎月の金額でも、始める年齢によって65歳時点の資産額は変わります。
例えば、毎月3万円(年36万円)を、仮に年率3%で運用できたとして65歳まで続けた場合の試算は次の通りです。年率3%はあくまで説明のための仮定であり、将来の運用成果を示すものでも保証するものでもありません。実際の運用成果は市場の値動きによって変動し、元本を下回ることもあります。
| 始める年齢 | 65歳までの年数 | 元本(拠出額の合計) | 65歳時点の資産額(年率3%と仮定) |
| 25歳 | 40年 | 1,440万円 | 約2,710万円 |
| 30歳 | 35年 | 1,260万円 | 約2,180万円 |
| 35歳 | 30年 | 1,080万円 | 約1,710万円 |
| 40歳 | 25年 | 900万円 | 約1,310万円 |
| 45歳 | 20年 | 720万円 | 約970万円 |
| 50歳 | 15年 | 540万円 | 約670万円 |
| 55歳 | 10年 | 360万円 | 約410万円 |
| 60歳 | 5年 | 180万円 | 約190万円 |
同じ毎月3万円でも、25歳から始めた場合は元本1,440万円に対して資産額が約2,710万円(元本の約1.9倍)になる計算ですが、55歳から始めた場合は元本360万円に対して約410万円(約1.1倍)にとどまります。運用できる期間が長いほど、運用益がさらに運用益を生む複利の効果が積み重なるためです。「同じ金額を積み立てるなら、早く始めるほど有利」と言われる主な理由はここにあります。
ただし、この試算はあくまで年率3%という一つの仮定に基づくもので、実際の値動きは年によって上下し、マイナスになる年もあります。焦って無理な金額を投資することが正解になるわけではありません。複利の効果を活かすために大切なのは、無理なく続けられる金額を、できるだけ早いうちから積み立て始めることだと言えます。
表の数字より優先すべきこと
ここまでの数字は、「65歳までに満額」という一つの目標を置いた試算にすぎません。生活防衛資金が足りない、近いうちに大きな支出がある、相場が下がると眠れなくなる。このような状態なら、表の金額にこだわらず、積立額を小さくする、始める時期を待つ、投資以外の準備を優先する選択もあります。
NISAで買った商品も値下がりする可能性があります。非課税という仕組みは、損失を防ぐものではありません。投資額は、「一時的に評価額が下がっても、生活を変えずに保有できる金額」で考えましょう。
始める前に確認したい4つのこと
- 何のためのお金か:老後、教育、住み替えなど、目的と必要になる時期を考える
- 近いうちに使う予定はないか:数年以内に必要な資金は、値動きのある商品に置かない
- 毎月いくらなら続けられるか:収入が減ったときにも家計を壊さない金額にする
- 何を買うか説明できるか:商品名ではなく、何に投資し、どんな値動きがありうるかを理解する
まとめ
新NISAの魅力は、枠の大きさだけではありません。長い時間をかけて、自分の生活設計に合わせて使えることです。まずは生活防衛資金と家計を整え、少額でも続けられる仕組みを作ることから始めましょう。
次は、長期・積立・分散とリスクの考え方を読んで、値動きとどう付き合うかを考えてみてください。
この記事は2026年7月26日に制度を確認した一般的な情報です。個別の商品選びや税務については、金融機関・税理士などの専門家に確認してください。投資は元本保証ではありません。

